剛柔流 形

「三戦」(さんちん)
 
 三戦は、剛柔流空手の基本であり、三つの基本的な要素からなっている。
一つ目は「立ち方(三戦立ち)」、二つ目は「呼吸法」、三つ目は「精神」である。
昔は三戦だけで三年から五年も稽古を積んだと言われ、剛柔流空は三戦に始まり三戦に終ると言われるゆえんである。


「撃砕第一」(げきさいだいいち)
 
 この形は、故 宮城長順 先生が、昭和十六年に初心者を指導するために考案された。
上段の攻防、中断の攻防、下段の攻防と三つの攻防に分かれ、連続技、諸手技からなり、合理的に基本技が体系づけられている。


「撃砕第二」(げきさいだいに)
 
 この形も、撃砕第一と同様、故 宮城長順 先生が考案した形である。
前半は撃砕第一とほとんど同じ内容であるが、後半に入って引受け、猫足立ち、虎口といった撃砕第一より多少難易度の高い技が出てくる。
引受け、虎口といった技は、足運びと同じに行われ、また、ムチミ(粘りのある動き)で行うところに特徴がある。

「砕破」(さいふぁ)
 
 この形は、演武時間約三十秒と剛柔流の形の中で最も短いが、拳槌打ち、双手突き、はずし技、裏突き、蹴り、足運び等、難度の高い技が多い。
「制引戦」(せいゆんちん)

剛柔流の形の中で、この形だけは蹴り技がない。
裏拳打ち、張り受け立ち方に連続技、応用変化があり、また、四股立ちが多く、下半身を鍛えるための力強い鍛錬形でもある。


「四向戦」(しそうちん)

この形の特徴は、掌底押し、貫手、腕押さえ、逆関節技、裏掛け受け(中断、下段)、縦肘当と開手の技が多く含まれている。


「三十六手」(さんせいるう)

この形は、足刀蹴り、追い蹴り、足取り、転身等の実践的な攻防の技術が多く含まれている。

「十八手」(せいぱい)

この形は、裏拳突き、裏拳打ち、拳槌打ちなど接近戦に対処する攻撃技、はずし技など効果的な護身術が多く含まれ動きの変化にも富んでいる。
応用分解が実に多彩で、秘伝とする技も含まれており、巧妙な円の動きには目を見張るものがある。


「久留頓破」(くるるんふぁ)

この形は、交差受け、ハンマー投げ等、猫のように素早い動きと、粘りのある動きが調和され、極めにくい動作を一挙にして極めるところに特徴がある。

「十三手」(せいさん)

この形は、多彩な技が含まれ、久留頓破(くるるんふぁ)、壱百零八手(すーぱーりんぺい)の形とともに剛柔流の代表的な形の一つで、習熟すればするほど味の出てくる形である。
特徴としては、前半はゆっくりした動作から素早い足捌き、転進、回転と速い動作に移り、突き、打ち、受けの連続した技があり、後半は、諸手つかみ引き、前蹴り、逆突き、掬い受けの同時連続技になっていることである。
剛と柔が調和され、変化のある形であるといえよう。

「壱百零八手」(すーぱーりんぺい)

この形は、剛柔流を代表する形で、上、中、下の体系に分かれ、現在剛柔流に伝わっている形は上であるといわれている。
剛柔流の独特の技法は総てこの形にあると言われ、虎口、合せ技、鶏口拳突き、跳び蹴りの連続技や裏技、隠し技も多く剛柔流の奥義がうかがえる形である。


「転掌」(てんしょう)

この形は、故・宮城長順先生が、大正四年に中国拳法を研究する目的で福建省を訪ねた際、南派小林拳白鶴拳の六合壱機手(略して六機手)を研究されて考案し、閉手形とした臍下丹田に力を集中し、気、息、体の修練を目的とすることは、三戦とまったく同じである。
正しい姿勢と呼吸によって開掌で各種の受け方、掌底の当て方等を体得する鍛錬形である。